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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「おい、裕貴。どうした?」
「………」
「裕貴くん?」
すると裕貴くんは強張った顔をして、あたし達に言った。
「前にさ、俺が音楽をやり始めた理由を須王さんと柚に教えたの覚えてる?」
あたしは須王と顔を見合わせてから、頷いて言った。
「うん。入院しているお友達のためでしょう?」
「そいつの名前、覚えてる?」
「ええと……」
そして行き当たったあたしは、怪訝な顔を裕貴くんに向ける。
「どう見てもあいつの顔なんだよ。俺の幼なじみ、遥の!」
「でも、面会謝絶なんだよね?」
「ああ。だからしばらくは見舞いに行けていないから、あいつがどうしているかわからない。わからないけど、俺が遥の顔を見間違えるわけないよ」
「ちょ、ちょっと待って」
あたしはぐらぐらする頭を手で抑えた。
「仮に、裕貴くんの幼なじみの遥くんが元気になって、裕貴くんに内緒でHARUKAというシンガーになっていたとして」
その仮定を須王は否定する。
「ありえねぇって。あいつがピエロに指示をしていたというのなら、頭が歌った歌の意味もわかっている。どうやって知ったというんだ」
そう、どうやって知ったの?
つい最近まで裕貴くんの幼なじみをして寝たきりだった少年が、九年前のあたしと天使との記憶を持ち、なにより天使の声をどうして持てたというのよ。