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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
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アクアパーク品川――。
巷でよく耳にする利便性のいい水族館で、夜も遅くまで開いているらしい。
お台場の遊園地といい、夜にそこまで需要があるのかしら……と思ったが、客足は多くないにしても、ラブラブカップルが肩や頭を寄せ合って入っていくのを見て、思わず考え込んでしまった。
水族館って、カップル御用達のやましい場所だったろうか。
そんなあたしの心境を知らずして、切符を買ってきた須王は、なんの躊躇もなく片手を伸ばしてあたしの肩に手を回すと、受付のお姉さんの顔を赤くさせるほど甘い微笑みをあたしに向けてくる。
蜜月期真っ盛りとでも言うような、熱っぽくも優しげな眼差しを向けて、とりとめないことをあたしに囁きながら、ちゅっと頬にキスをして笑う超絶美形の男は、無駄に目立ってカップルの男性達のハードルを上げたようで、あちこちから羨望の視線とひそひそ声が聞こえてくる。
眼鏡をしていたせいか、幸い須王の顔までは知られることなかったようだが、うっとおしいほどまとまりついてくる男に、実はあたしまでもが悪い気がしていないのは、館内でキスばかりしている熱々カップルに麻痺されてしまったからかもしれない。
見慣れるのって怖いね。
とろりとしたダークブルーの甘い瞳をこちらに向けて、リップ音をたてて唇を啄むような仕草を見せてきたから、うっかりとふらふらと誘われて、通路の真ん中でちゅうをしそうになり……はっと気づいて、魅惑的な須王の唇を掌に受けた。
どうだ、あたしは場所に影響を受けないぞ!
そう思って余裕ぶって笑って見せたら、挑発するような眼差しをしたまま、顎のシャープなラインを見せつけるように頭を少し傾けて、あたしの掌を舌でいやらしく舐めてきたから、思わず「ひゃあん」と変な声を上げて、手を引っ込めてしまう。
「ごちそうさま」
そう言って艶やかな流し目を落としながら、半開きの唇を濡れた舌で舐め回す仕草は鼻血が出そうなほどにセクシーで……、降参とばかりに顔を沸騰させてぐすぐす鼻を鳴らすあたしを見た須王は、笑いながらよしよしとあたしの頭を撫でた。
この男の噎せ返る色気に、あたしは抗えない。
地中暮らしのモグモグ、白旗を揚げるしかない。