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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

 やがてあたしの足に力が入らなくなってよろけてしまえば、口と舌を繋げたまま、須王が斜め抱きをして両腕であたしを支え、さらに上から被さるようにして、舌を深く差し込み、性急なキスをしてくる。

 ざらついた舌がくねり、あたしの舌を奥まで舐め上げてくる。
 えづきそうになりながらも、須王の存在感があたしを拓いていく。

 衣擦れの音すらもいやらしい。
 もう脳が蕩けておかしくなりそう。

 息も絶え絶えになったあたしを気づいてか、須王が銀の糸を引かせながら唇を離してくれた。大きく酸素を吸うあたしの口端に垂れた唾液を舌で舐め上げると、身体を捻るようにしてあたしの身体をぎゅっと抱きしめ、首や耳にちゅっちゅっと、軽いキスで戯れる。

 どこかで声が聞こえる。

「須、王……ねぇ、見られちゃう……」

 キスだけで欲情しているあたしの声は上擦り、呼吸が荒く。

「お前、見られると燃えるんだろ?」

 思わず、会社のビルの六階で淫らなことをしてしまったことを思い出し、須王の背中をばんばんと叩いて抗議する。

「お前は周りを気にしないでいいんだよ。甘やかすって言っただろう? だからお前は俺に甘えていればいいの。俺のことだけ考えてろよ」

「……っ」

 あたしの耳殻を甘噛みした須王が、熱く囁いた。

「はぁ……、お前がすげぇ好き。可愛くてたまんねぇわ」

 悩ましい吐息とともに、鼓膜に送り込んできたきたその言葉は破壊的で。

「俺、お前のためなら空も飛べそうな気がする」

 ハデス様、空も飛びますか。

 この男なら出来そうな気もする。

 
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