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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「なんか喉渇かねぇ? どっか店行くか」
「あ、あそこに自販機がある。なにか飲み物を買って……下さい」
財布を持っていないことに改めて気づいたあたしは、項垂れてしまった。
笑う須王が、林檎ジュースのペットボトルを買ってくれた。
王様が林檎ジュースなんて可愛いと思ってにやにやしていたら、どうやらすぐ赤くなるあたしのイメージらしい。
誰が赤くしているのよと思いながらペッドボトルの蓋をとって口をつけて飲んでいたら、横から須王が手を出してペットボトルを奪い、あたしが口をつけた部分を口にあてて、ジュースをコクリと飲み始めた。
「あ、間接キス……」
すると須王は、ぶほっと吹き出してむせ込んでしまった。
「お前、今さら……ゴホゴホっ」
「だ、大丈夫? なにも言わない方がいいよ」
かなり辛そうで、眼鏡を外してあげて広い背中を摩って上げたらようやく落ち着いた。
「赤い顔でへんなこと言うなって」
須王に小突かれた。
「だって……」
「可愛いことを言うと、俺暴走するぞ?」
「え、可愛いことだったの?」
「お前が言うのは、皆可愛いの」
そして身を屈めて、ちゅっとあたしの唇を奪い、べろんと唇の表面を左右に舐めた。
「ごちそうさま」
「もう!」
……そんなバカップル丸出しのあたし達を、見ているひと組のカップルがいた。それがわかったのは、女性の声がしたからだ。
「早瀬、須王……!?」
うわ、やばい。
須王の眼鏡はあたしの手の中。
慌ててかけてももう遅かった。
「え、写真……ツーショットとって下さいっ!」
綺麗系の女性はスマホを取り出して、あたしに撮れと手に握らせた。
しかもツーショットということは、彼氏は置き去りだ。
彼氏止めないのかなとちらりと見てみたが、彼女ではなくてなぜかあたしを見ている。これは撮れということなのだろうか。