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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

「駄目です!!」

 涙目で言うあたしの肩を引き寄せたのは、須王だった。

「悪いが、俺……写真を撮るのを、いやそれ以前に、俺に触れていいも悪いもなにも言ってねぇ。勝手に進めねぇで貰えるかな、反吐が出そうだから」

「え?」

 〝反吐が出そう〟
 その言葉に、女性の目が点となった。 

「あんた、自分のどこに自信があるのかわからねぇけど、俺の最愛の恋人に勝てると思っているのなら、眼科に行くか、無駄な目はくりぬいた方がいい」

「な、なななな!」

「ちょ、須王……っ」

「嘘だと思うなら、あんたの彼氏を見てみろよ。俺の恋人に色目使う男を。ひとをダシに使う前に、自分のものの手綱くらいちゃんと引いておけよ」

「く――っ!! 宏孝、行くわよ!!」

 女性は、にやにやしてモグモグを見ていた、気持ち悪い男性の襟首を掴んでいなくなった。
 嵐が過ぎ去れば不安になる。

「ど、どうしよう……SNSとかで須王の悪口かかれたら」
 
「は? そんなの気にしてたの、お前」

「当然でしょう? こんなモグラが嫉妬しちゃったから」

「……なぁ」

「ああああ、どうしよう。明日新聞やニュースで、須王のことが悪く書かれていたら」

「……柚、まずは落ち着け」

 わたわたと慌てたあたしは、須王にぎゅっと抱きしめられる。

「これが落ち着いていられる? あたしちょっと追いかけて謝って……」

「いらねぇよ。あの女、お前に浮気したあの男の気を引くために、あんなことをしでかしたんだから」

「へ? 浮気?」

「あの男が俺の柚に色目使ったのが元凶なんだよ」

「確かににやにやはしていたけど、それはあたし自身ではなく、須王といちゃいちゃしていたからじゃ……」

「違う。俺の柚に惚れたんだよ、あの男。柚の可愛さに気づいたんだ」

 思いきり舌打ちの音が聞こえてくる。
 
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