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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

「あ、あの……須王さん」

 須王の空気が張り詰めたのは、一瞬だった。

「なぁ、柚。……お前、嫉妬したの?」

 その須王の低い声に、どきっとした。

「妬いたの?」

 自分で言ってしまったことを思い出したあたしは、隠すこともないと思って、頷いて言った。

「うん……。嫌だったの。あたしの須王にべたべた触られるのが」

「………」

「……須王?」

「はぁ……最高」

 須王は長い息を吐いた後、上擦った声でそう呟いた。

「お前が妬くなんて。こんなに嬉しいことをしてくれるのなら俺、他の女とべたべたしているのお前に見せつけようかな」

「駄目――っ!!」

「あはははは。嘘だって。俺はお前だけしか隣に居るの許さねぇから。さっきもすげぇ鳥肌立って、お前が動かなきゃ『ひぃやぁぁぁ』と走り出そうと思った」

「須王!!」

「あははははは」

 笑う須王に、あたしの尖った唇は奪われる。
 頬を優しく摩られながら舌を絡め合うと、胸もお腹の奥もきゅんと疼いて、たまらない気持ちになってくる。

 あたしのものだと、そう身分不相応にも自覚してしまったら、須王が欲しくてたまらなくなったのだ。
 もっと独占したい。
 あたしの須王だと、大きな声で言いたい――。

「……柚、車に行こう? ふたりきりになりてぇから」

「うん」

 あたしは須王の胸に頬を寄せて頷いた。

 凄くこのひとが好き。
 誰にも渡したくない。
 あたしだけのものであって欲しい。

 この先もずっと――。

 
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