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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

「……子供はちゃんとしてから作ろう」

「………」

「そんなことでお前を孕ませたくねぇ。お前が孕むのは、俺の精を中で受けてからにしろ。ちゃんとしてから……ちゃんとお前に注ぐから」

「……っ」

「外に出したとはいえ、百%の避妊率じゃねぇが、それでも少なくとも……愛し合った結果なら、まだいいだろう。終わった残滓で孕むな」

 あたしは須王に抱き付いた。

「須王は、子供が欲しくないの?」

「欲しいさ。だけどちゃんとしよう。遊びじゃねぇから、真剣にしてぇんだ。とはいっても、生でやってる奴がなにを言う、だけど。しかもお前を孕ませたくて仕方がなかったところの、ギリギリの判断だが、男は欲を吐いて終わるが、女はそれを抱えて育てねぇといけねぇ。だったら、快楽に流されるわけにはいかねぇだろ。今度からゴム使うから」

「……ありがとう、ちゃんと考えてくれて。あたし、凄く幸せだったよ。産みたいと思えるほど」

「……だから、お前は俺を口説かなくてもいいから」

「え、これも口説き文句なの?」

「当然だろう? お前無自覚だからやばいよ」

 笑いながら抱き合いキスをする。

「なんだか抱けば抱くほど、お前がすげぇ好きになってる」

「ははは」

「……自分もだ、とかはねぇのかよ」

 須王が唇を尖らせる。

「あたしの身体でわかるでしょう」

「……まあな。俺がそうしたんだ」

 須王はもぞりと動いてあたしの耳を愛撫した。

「や、ああ……」

「柚。もう一回、しよ」

「……っ」

「一回じゃ我慢出来ねぇよ」

「あれ、避妊は?」

「……くそっ、鬼!」

「あははは」

「むかつく、その余裕」

 その時――。
 須王のスマホが耳慣れた旋律を鳴らした。

「………」

 チャンチャカチャカチャカ、

「………」

 スッチャンチャン。

「……棗くんじゃない? 出たら?」

 チャンチャカチャカチャカ、

「いらねぇよ。くそっ、動いていたからバイブが解除されたのか?」

 スッチャンチャン。

「嫌なら、着メロ替えればいいのに」

「替え方を知らねぇんだよ」

 プヒ~。

 我慢出来ずに笑い転げるあたしを、須王は忌々しげに睨み付けながら、スマホの通話ボタンを押した。

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