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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「なんで笑うんだよ」
「いや、その……あはははは」
あたしに感情を与えるのはいつだって須王だ。
あたし本当にこのひとのことが好きだ。
笑っていながらでも、可愛いとか愛おしいとかの気持ちにしかならない。
「柚……」
信号が止まると、彼は熱の籠もった声を出す。
それだけであたしの身体は、反応してしまうんだ。
須王はあたしの顔を両手で挟み、静かに顔を傾けてキスをする。
ただ唇を押し当てるだけのキスだったが、うっとりとしたような互いの視線を絡ませたまま唇が離れれば、名残惜しくてまた唇が重なる。
角度を変えて柔らかく押しつけられる須王のキスは優しすぎて、大事にされているということがわかったあたしは、胸の奥が悦びにきゅっとなる。
暗闇に光る信号機の赤い光を反射させたダークブルーの瞳は、いつまでも欲情の炎を消すことはなく、ずっと瞳の奥に燻らせていながらも、自制心により外に出ることなく、やがて細められた微笑みの影に見えなくなった。
「お前が好きだ」
暗闇に小さく響く甘い声が切なく震えて、あたしの心も震撼した。
「俺はもう消えねぇから。この先もずっと、お前の傍にいると決めたから」
まるで自分に言い聞かせるような、譫言みたいに。
……明日は、皆で病院に行く。
遥くんとHARUKA、そして天使の関連性は、なにかわかるのか。
妙にざわざわとした心を紛らわすように、静謐な暗闇の中で心までをしっとりと重ね合わせた。