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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

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 遥くんの部屋に、三回目は入れなかった。
 それはあの医師が、外から鍵をかけてしまったからだ。
 即ち、ドアの内外に鍵が取り付けられている、そんな特別室――。

 遥くんは二重人格というオチか。
 それとも、たとえば幽霊のように取り憑かれているというオチか。
 どちらにしてもかなりの問題がある。

 真相はよくわからないまま、遥くんの謎めいた歌と言葉で、ドキドキしながら相対した時間は、幕を閉じた。
 ただ思うのは――、恐らく「初めまして」ではないのだろう、遥くんにとっては。

 恐らく須王や棗くんの力があれば、強行突破も可能かもしれないが、須王は再度の確認はいらないと言い、続けてこう言った。

――きっとまた会える。裕貴、遥の昔の写真を見せてくれねぇか?

 ……ということであたし達は、裕貴くんの家にお邪魔しています。

「お前……ボンボンかよ!?」

 そう突っ込んだのは発案者たる須王。

 そのはず、誰もが勝手に想像していた。
 裕貴くんの家は昔ながらのご長寿アニメに出てくるような、狭くて古い一軒家で、その中でも女性陣が力を持っているために、裕貴くんは肩身狭い思いをしているのだと。
 ……いやまあ、実際はそうかもしれないけれど、あまりに裕貴くんの家は豪邸過ぎた。

「いやいや、見栄張ってでかい屋敷買ったけど、ここ凄い古いんだ。綺麗そうに見えるけど、見かけ倒しって奴。毎年シロアリ駆除隊を呼んでるから」

 それでも、都心でないとしても、上物だけでもかなりのお値段に思える。
 敷地面積は百坪は下らないだろう。
 これは、庶民の域を出ている。
 そういえば裕貴くんだって、都内の有名な私立高校に通っているんだし、庶民ではないの?

 考えてみれば棗くんだった稼いでお金持ちだろうからいい家に住んでいるだろうし、女帝はMSミュージック社長のご令嬢だし、須王は笑いたいくらいに豪邸持ちだし(ひとつが消失しても影響なさそう)、小林さんはどうだかわからないから、あたしの仲間はここにいない、小林さんかもしれない。
 そういう小林さんだって、住んでいる家はわからないから、最悪あたしだけひとりぼっちかもしれない。
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