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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
家には裕貴くんのお母さんとおばあちゃんがいて、須王だとわかるや否や階段を駆け下りてきて、感涙に泣き出し、その場に正座してぺこぺことなにかの宗教の教祖に向けているかのように拝み始めた。そして化粧をしていないのに気づいてまた二階に駆け上って、二分で出てきた。
リビングは14畳くらいで、清潔感ある白で統一されている。
インテリアとか見る限りにおいては、あまり成金趣味には思えず、どちらかと言えばおばあさんの趣味に合わせているのか、赤紫色の木彫りの置物など、地味でレトロな調度が目立つ。
須王は三人掛けのソファの真横にあたしと棗くんを置きたがったが、あたしと棗くんは、イノシシのように真っ直ぐに猛攻してきたふたりに弾かれよろけた隙に、席を取られてしまった。
一人がけの椅子に裕貴くんが座り、テーブルを挟んで向かい側の一人がけ用の椅子に棗くんが座り、あたしと女帝は、ハーレム状態の須王を冷ややかに見つめるふたり掛け用の椅子に座った。
裕貴くんはずっと頭を抱えて、邪魔だから出て行けと言っていたのに、まるで憑依でもしているように須王から離れず、ふたり共にマシンガントークをあさっての方向に飛ばし続け、噛み合わない話を延々としていた。
普段の須王なら苛立ち怒鳴りだしそうだが、そこは熱狂ファン相手だからなのか、それとも育てたいと思う裕貴くんの家族だからなのか、表向きは嫌な顔ひとつせずにこにこして聞いていたために、さらに株は急上昇したようだ。
このババ殺しめ。