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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「どれだけお母さんとおばあさんが素敵なのかは、裕貴くんを見ていればよくわかります。この先のプロデュースのためにも、もっと裕貴くんを知りたいと思うのですが、小さい頃の写真や、交友関係がわかる写真などはございませんか?」
……営業用だと思われるキラースマイルに、ふたりは意気揚々と部屋に探しに行った。
その間に須王はがしがしと頭を掻きながら、酸素を胸に吸い込み、裕貴くんに言った。
「……悪ぃが俺、お前の家族の話、最初から最後まで聞き流すぞ。今の今まで、甲高い声を出すあのふたりがなにを話していたか、全然頭に入ってきてねぇから。理解できねぇ馬鹿だと思ってくれていい」
プライドが高い孤高の王様が、たとえ高校生に馬鹿だと思われても、理解することを放棄するなんてよほどのことだ。
「わかるよ、須王さん。俺もそんな感じだ。これに姉達が加わるんだ。それが毎日毎日食事の度に、生産性のない自分だけの話を延々とされたら、無口になるだろう? それで黙ると、感じ悪いだのそんな風に育てた覚えはないだの、ぎゃあぎゃあとさらにうるさくなる。適当に相づちうって、適当に聞き流して」
「ああ、そうさせて貰う。想像以上に手強いわ」
やがておばあさんとお母さんは、お洋服を若々しい白いワンピースにお召し替えをしてきながら、山に写真を抱えて現われた。
広げて見せるのは、すべて裕貴くんの写真。
「こんなの、俺知らねぇぞ!?」
……盗み撮りが多いらしい。
どれだけ裕貴くんは、家族に愛されているんだろう。
そしてあたしは、どれだけ家族に愛されていないんだろう。
あたしの家族は、あたしの写真なんか持っていないだろう。
家を出てからは特に。
写真に残す価値もない娘だったから。