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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「ああそうかよ、捨てた子供は他人だものな。それならそれでいい、だけどそう言うのなら、俺に残した血の責任を取れよ!! お前が俺の中の血を否定するのなら、お前があのジジイにそう言えよ!」
「え……」
「なんだのその初めて聞きましたっていう顔は! はっ、俺に付加価値が出来た金の卵だって!? 金や血が欲しいならくれてやるから、さっさといなくなれよ。なんで生きているんだよっ!!」
須王は財布を取り出してさっちゃんにぶつけ、そして袖を捲り上げると、傍の棚の上に置かれていたはさみを突き立て、下に引いた。
「須王、駄目ぇぇぇぇっ!!」
あたしは全力で須王からハサミを奪い取って遠くに放り、どくどくと血が流れる須王の腕に抱き付くようにして全身で血を止めようとした。
「あなたが誰の母親でもいい」
あたしは顔を捻るようにして、声を上げた。
「だけど子供を産んだのなら、子供の命を守って下さい! どんなに気にくわなくても、それでも……っ、子供は親を選べられないんですっ!」
須王の血よ、止まれ、止まれ!
「子供は親の玩具じゃないっ、モノじゃないっ! あたし達子供は生きているんです。その存在を否定しないで!!」
あたしは両目からぼたぼたと涙を落として言った。
「あなたが彼の母親であったのなら、あなたが知らないと言う度に彼の寿命が縮まっていっているような気がしませんか? あなたが母親なら、どうして須王の心の痛みから目をそむけるんですか。どうして彼の人生を狂わせて地獄に落としたその責任から、逃れようとするんですか!」
あたしは涙が流れる目で、さっちゃんを睨み付ける。
「逃れようと思うくらい後悔が残る子供なら、どうして手放したんですか! どうして向き合わないんですか! それが大人のすることですか!」
須王の反対の手が、あたしを宥めるように背中を撫でる。
それが優しくて、あたしは嗚咽が止まらず、激しく泣いてしまう。