この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

「だけどあたしは、須王に少しでも……愛されていたという証が欲しくて」

 ぶわりと涙が膨れあがったが、唇を噛みしめて我慢した。

「部外者が本当にごめんなさい!」

 ……そうあたしは、須王と棗くんのふたりの世界に踏み入ることは出来ないのだ。
 少しだけ棗くんと仲良くなって、須王と付き合ったからと、なんとか出来ると思ったのは、確かにあたしの自惚れだ。

 だけど、棗くんにまるで理解されなかったのは悲しくて。
 ほんの少しでも、あたしも心の中に入れて欲しかった。
 彼らの過去を軽んじたわけではなかった。

 あたしは、部外者だ。
 いつまで経っても。

「そうだ裕貴くん、お手洗い貸して貰える?」

「あ、ああ……。場所は……」

「私が案内してあげる」

 そう言ったのは、裕貴くんのお母さん。
 さっちゃんが消えたドアからあたしを連れて、誰からも見えなくなったところで、お母さんはあたしを抱きしめた。

「泣きなさい」

「え……」

「あなたもお母さんに愛されずに苦労してきたのね。お母さんの愛が、欲しかったのね」

「……っ」

「だから今は、お母さんだと思って泣きなさい。我慢してきたんでしょう?」

「……う、ううっ、うああああああっ」

 あたしは裕貴くんのお母さんに抱き付いて、声を上げて泣いた。
 ドアを閉めたとはいえ、皆にも聞こえているかもしれない。

 それでもあたしは、無償で他人の子供も愛してくれる裕貴くんのお母さんの優しさに、トラウマの防波堤が壊れてしまったんだ。
  
「あああああああっ!」

 ……あたしも、須王や棗くんを理解出来ると思っていた。
 あたしも同じ、母親に見捨てられた仲間だからと。
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ