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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
 

「み、皆は?」

 この王様は本当に心臓が悪い。

「ああ、ここでセックスしろと、気を利かせて出て行った」

「はあああああ!?」

 須王は屈託なく笑った。

「冗談にきまってるだろ? なんで裕貴の家でヤラねぇといけねぇんだよ。今夜は月見ながら繋がるんだろう?」

「なっ、ちょっ! 誰が聞いているか」

 あたしは慌てて周りを見る。

「あはははは。誰もいねぇよ、今、外に行ってる。裕貴のお袋はばあさんと庭を見ているらしい」

「……な、なんで突然、皆出かけるの!?」

「それは勿論……」

 須王は両手を伸ばして、また軽々とあたしを持ち上げ(何度も言っているが、あたしはそこまで軽くない!)、須王の隣に座らせて腰を引き寄せた。

「お前の泣き崩れた顔を綺麗に出来るのは、俺だけだからじゃねぇ?」

「ど、どういう意味……っ」

「お前は俺の元で一段と綺麗になるから……と、言いてぇところだが、お前が全然こっち見ねぇから、お前が気にするその顔に俺が化粧をしてやる」

「は!?」

「してぇんだろ、化粧。どこに入ってるの、化粧道具」

「自分でするって! ちょっと、バッグ覗かないでよ」

「男の夢をわかれよ。俺の手でお前を綺麗にしてやりてぇの!」

「だからって化粧じゃなくてもいいでしょう!?」

「俺は器用だから安心しろって」

「そういう問題じゃなく!」

 恥ずかしいに決まっている。
 この顔を、無防備に須王の前に晒すなんて。
 毛穴が開いて、なにが見えるかわからないあたしの顔を、じっくりと須王が見ているなんて!
 
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