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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
バッグが駄目ならと、化粧ポーチを奪おうとすれば、失敗。
「……これだな」
それどころか須王にばれてしまい、ポーチを取り上げられて、ファスナーを開けられる。
どれがどれかわからないだろうと思っていたら、小さなスプレー式の化粧水をあたしの顔にかけ、コットンに乳液をつけてあたしの顔を拭いた。
「ど、どうしてそんなことを……」
須王も女装趣味があったのか、はたまた過去の女から教えて貰ったのか。
驚いたあたしは、抵抗する力を無くしてしまう。
「棗がよくやって、二日酔いの時に手伝わされたことがあった。同じ化粧品だし、水分を補給して化粧を直さないとと言って。……間違ってた?」
あたしは頭をぶんぶんと振りながら思う。
この化粧品、そこまでお高くはないんだけれど、同じ化粧品を使ってこの仕上がりの差!!
元々のパーツの違いはあるだろうけれど、棗くんのお肌のきめ細やかさを化粧が後押ししているのなら、どうしてあたしには後押ししてくれないんだろう。
須王はコンパクト式のファンデーションをつけたパフを手に取り、言った。
「……させて? お前を綺麗にしてやるから」
ダークブルーの瞳が優しくて。
「ん?」
その顔を傾けて覗き込むのは、反則だ。
もうここまでされたのだし、嫌だと言えなくなるじゃないか。
「……わかった。よろしくお願いします」
「素直でよろしい。ちょっと目を閉じていろよ」
化粧している姿って本当は男性に見られたくないのに、なんでよりによってこんな平凡顔を、超絶イケメン須王にじっくり見られるんだろう。
もう、なんの羞恥プレイだろう……。
嗅ぎ慣れたパウダーの仄かな甘い匂いがする。
ゆっくりとスポンジがあてられていく、肌で感じるその優しい感覚が、顔を愛撫されているように思えてしまい、どういう顔をしていいのかわからず。目を閉じながらも照れてしまう。