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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「な、なんで、皆で裕貴くんのおうちに来て、そんな発想に……」
須王は、あたしの耳を唇で甘噛みしながら、熱い吐息を耳の穴に吹き込むようにして言った。
「当然だろう。俺の女が可愛すぎてたまんねぇからだ。もう本当になんなの、お前。俺をどうさせたいの?」
心の震えと共に、須王の唇があたしの首に這い、舌で舐められ、あたしは身震いをした。
「自分のトラウマぶり返して傷ついて泣きながら、俺を守ろうとするの、お前以外の他の誰がいるよ。……お前だけだろ、そんな可愛いことすんの」
「……な、棗くんには余計なお世話だと言われたし。あたし、勝手なことをしちゃったから」
「確かにな、組織を知らねぇ奴には知った顔はして貰いたくねぇ。それは俺のトラウマを勝手に踏みにじられて、広げられるような感覚だから」
「……ごめん、あたし……っ」
須王は逃げようとしたあたしを両手で横から抱きしめた。
あたしの頭の上には須王の顔があるようで、頬を頭上に擦りつけたようだ。
「お前だけは、踏み込んでくることを許した。だから、最大のトラウマをお前に話しただろう、俺。裕貴にも小林にも話していないことをお前だけには……。だけど棗には、そういう奴がいねぇんだ」
「………」
「別に哀れんで欲しいわけじゃねぇ。同情されてぇわけじゃねぇんだ。ただ……こんなに血で穢れた俺達でも、まるごと愛してくれる奴が欲しいだけで」
「……須王も棗くんも穢れてない」
「それは、お前の願望だ。俺も棗も、命令されれば手を血に染めて生きてきた。……今での血の臭いが消えねぇのは、これが俺達が背負わねばいけねぇ咎人の烙印だからなのか」
「須王……」
……生きるために、命令に絶対服従。
たとえそれが、誰かの命を奪うもので、それが私的なものでどんなに理不尽なものであろうとも。
それはわかる。
須王が自宅で語った彼の悲痛さは、あたしは忘れることは出来ないから。