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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
「いやいや、柚。柚だって遥を見ただろう? 遥、健康児に見えた?」
か細く儚げだった遥くん。
「でも、HARUKAが遥であるのなら、少なくとも上野公園で上原サン達が目撃した程度には元気なはずよ」
棗くんの声。
「上野公園では、飛び跳ねるようにしていなくなったから、病弱とは思えなかったわね。むしろイマドキの若者、健康体っていう感じで」
女帝がそれに同調する。
「裕貴くん、大丈夫?」
後ろが静かすぎて、こっそりと後部座席を向いてみたら、裕貴くんは頭を抱えて、言葉を失っていた。
「でも確かに裕貴。病院での遥は、元気はなかったわよね。上野公園の時とは違ったわ」
裕貴くんの肩を持つような女帝の言葉にも、棗くんは動じることなく受けた。
「少なくとも、血しぶきが飛んでいた状況よ。切った直後は元気はなくなるんじゃないかしら。ホラーやファンタジーではなく、現実問題として」
「もうホラーやファンタジーじゃないか。一体なんのために、切られたんだよ!」
裕貴くんが勢いよく、シートで前のめりになって叫ぶ。
「見たところ、四肢はあったようね。頭もついていたし、胴体もあったよう」
「棗姉さん、怖いこと言うなよ!」
「だけど、出て行った四人の医師達とナースのうち、ひとりが大きなケースを肩からぶら下げていたのを見た?」
まるで見ていない。
とにかく表情しか、あたしは見ていなかった。
「あれが気になるのよ、無性に」
「医療道具だったんじゃ?」
「確かにそれも考えられるけど、なにか嫌な予感というか……」
「……となれば、遥が提供者(ドナー)の可能性が高いか」
「ええ。その分、どう空洞に埋めているのかわからないけど。まさか身体裂いたら空っぽだった、というわけではないでしょうし」
「……遥も提供を受けているということは?」
「だとすれば、遥の身体は拒絶反応を起こさず、提供者の身体も拒絶反応が出ないということ? そういう特殊性があるのかしら」
夏が過ぎたというのに、棗くんが須王と怖い話をしていて、後ろ三人は縮こまって震え上がり、前の美形コンビを遠巻きに見た。
後ろの三人では、どう考えてもそう言った結論に達しないだろう。