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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
拒絶反応は亜貴でわかる。
亜貴も誰かからの臓器を移植して、命を繋いだのだ。
臓器が誰の身体で生きたいと望むか、亜貴の身体で生きてもいいと思うか……あたしはそんな感覚でいる。
医学的には免疫がどうの抗体がどうのと説明は受けたけれど、所詮は命と命のぶつかり合いだ。
そう考えれば、臓器にも命は宿っている。
……それはわかるけれども、実際は他人の臓器を身体に入れたり、自分の臓器を誰かに入れたりということを想像すると、ホラーじみて思える。
ましてや、死なないとか生き返るとか……普通ではない。
まあ、遥くんが普通ではないのはわかっているけれども!
だけどたまたま遥くんを見た時が具合悪い時で、そして元気になるのなら、HARUKAであってもおかしくない。
裕貴くんだって、面会謝絶の時は中に遥くんがいたかどうかは確認していないのだ。
後は、抜け出す時に人の目につくと思うけれど……。
「棗、遥の部屋が回り込んだ奥だったろう? 遥の部屋の広さから言えば、どうも間取り的に、そこまで大きくなくても空間があってもいいように思えるんだ」
「じゃあもしかして、HARUKAとなった時はそこから抜け出している可能性もあるってことね。OK、裏から入院等の間取図、手に入れる」
……しかしふたりにとってみれば、目撃がどうのなどは問題にならないらしい。どうして隠し部屋とかの発想になれるんだろう。
「でも、隠し階段とかそういうスペース、あるかなあ」
あたしは思わずぼやく。
「下に行くには、一人乗りのエレベーターでもあればいい。改装とかした形跡があるのなら、業務用のもないとは言い切れないしね」
またもや棗くんに一蹴された。
「私達が一度目に見た時は、機械やカーテンしか見えなかった。それが二度目の時にはなかったということは、それが忽然と消えたのではなく、あの部屋に、或いは続き間に、あれらを収容出来るスペースはあるということになる」
置き場所があるということは、使われることを想定しているとも言える。
確かに突然消えましたという説明より、どこかに片付けましたの方が現実的だ。四人もいれば、さっさと片付けることは出来るだろう。
その片付け場所に水道があるのなら、血がついても洗い落とすことも出来る。