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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice

「その医療チームは内部なんですか?」
棗くんが聞くと、師長さんは外部だと答える。
「正直、こちらはノータッチの部分があって、細やかな部分はわからないんですよ。坪内先生ならもしかしておわかりかもしれませんが、外部にお任せしてから、ここに見えられるのも前ほど頻繁ではないんです」
「では内部の担当医がいながら、外部の医療チームを、この病院の病棟に頻繁に入れて、勝手な診察や処置をさせていると?」
須王のやや棘がある言い方に、師長さんは困ったように眉尻を下げた。
「医療チームの交代は、理事長からの指示なので」
即座に棗くんが呼応する。
「ということは、理事長ならその外部医療チームの身元がわかるんですね? 理事長のお名前は?」
棗くんなら、どんな大物であろうとも、調べ上げれる。
師長さんは言った。
「オシヅキエイイチロウさんです」
須王の顔が険しくなった。
オシヅキ……ということは、渉さんのいる忍月のこと?
忍月財閥のオシヅキ?
そして、師長さんが口にしたフルネームに、あたしは記憶があった。
それは前に、須王が言っていた――。
「ねぇ、柚。その名前って……、忍月コーポレーションの副社長の忍月栄一郎のことよね? 私の父さんと親しい」
先に気づいたのは女帝だった。
――ああ。ただ栄一郎というのは、コーポレーション社長であり忍月財閥現当主の甥にあたり、どちらも後を継ぎたくて躍起になっている。
そう須王は言っていた。
なんでそんなことを言われたんだっけ?
どうしてそんな話題になったんだっけ?

