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エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
  

 あたし達は顔を見合わせた。
 坪内医師に話を聞いてみないと、特別室の本当の意味がわからない。

 過去死んでばかりの患者が収容されたのなら、遥くんはどうなるのだろう。
 死ぬことを前提で入れられているのだろうか。

――棗姉さん、その理屈でいけば、遥は切り刻まれても死なないということ?

――もしくは、生き返るのか。

 裕貴くん家族が知る遥くんの過去があてにならないのだとしたら、もしかして彼は、裕貴くんが記憶しているよりずっと昔か、ずっと後に特別室に入ったことになる。

 だけどあたしには、そうすることによってなにが見えるのかわからなかった。





 帰りの車は、棗くんが運転した。
 
「ところで須王、棗くん。坪内医師の写真が、あの医者ではないとわかった時の師長さんの言葉に、顔を見合わせたでしょう? あれはなぜ?」

 あたしはずっと気になっていた。

――もしかして……、坪内医師ではなく向こうの方じゃないかしら。容態が急変してから担当ナースと医師が数名つくことになったのよ。とても腕のいい医者達だから……。

「ああ、あれね」

 棗くんはハンドルを切って右折しながら、こともなげに言った。

「まるで同じ台詞を、前に聞いたでしょう」

 あたしは隣の女帝と後ろに座っている裕貴くんに無言で尋ねたが、ふたりは棗くんの言った意味がわからないようだった。 

「ごめん、全然覚えてないんだ」

「あら。遥のことを聞いた時よ」

「……あ」

 そう声を出したのは、裕貴くんだ。

「早苗ちゃん!」

 ということは、ナースステーションで裕貴くんが一番最初に話していたナースだ。あたし達が語るいけすかない医師を不信に思い、一緒に遥くんの病室に行った、ナースステーションにいた看護師。
 
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