この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第11章 Darkness Voice
あたし達は顔を見合わせた。
坪内医師に話を聞いてみないと、特別室の本当の意味がわからない。
過去死んでばかりの患者が収容されたのなら、遥くんはどうなるのだろう。
死ぬことを前提で入れられているのだろうか。
――棗姉さん、その理屈でいけば、遥は切り刻まれても死なないということ?
――もしくは、生き返るのか。
裕貴くん家族が知る遥くんの過去があてにならないのだとしたら、もしかして彼は、裕貴くんが記憶しているよりずっと昔か、ずっと後に特別室に入ったことになる。
だけどあたしには、そうすることによってなにが見えるのかわからなかった。
帰りの車は、棗くんが運転した。
「ところで須王、棗くん。坪内医師の写真が、あの医者ではないとわかった時の師長さんの言葉に、顔を見合わせたでしょう? あれはなぜ?」
あたしはずっと気になっていた。
――もしかして……、坪内医師ではなく向こうの方じゃないかしら。容態が急変してから担当ナースと医師が数名つくことになったのよ。とても腕のいい医者達だから……。
「ああ、あれね」
棗くんはハンドルを切って右折しながら、こともなげに言った。
「まるで同じ台詞を、前に聞いたでしょう」
あたしは隣の女帝と後ろに座っている裕貴くんに無言で尋ねたが、ふたりは棗くんの言った意味がわからないようだった。
「ごめん、全然覚えてないんだ」
「あら。遥のことを聞いた時よ」
「……あ」
そう声を出したのは、裕貴くんだ。
「早苗ちゃん!」
ということは、ナースステーションで裕貴くんが一番最初に話していたナースだ。あたし達が語るいけすかない医師を不信に思い、一緒に遥くんの病室に行った、ナースステーションにいた看護師。