この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
そんなことを思いながら、エリュシオンより広く綺麗なフロアに入った。
「いらっしゃいませ、瀬田様。社長室にて社長がお待ちしております。九階までエレベーターでお上がり下さい」
瀬田さんは顔パスで、お揃いの制服を着た三人の受付嬢に、にこやかに挨拶をされている。
そしてアポを取っていない須王を見て、受付嬢達の瀬田さんに向けていた作った笑顔が、わかりやすいほど欲望をただ漏れにして、にやけるようにして緩む様を、あたしはじっくりと見た。
当の本人はいつもながらの反応に、動じることはなく。
「ああ、彼らは私の友人だ。是非社長に紹介したくてね。早瀬くんはわかるね。皆早瀬くんの部下だ」
須王以外、部下という一括りにされてしまった棗くんも女帝も、営業用スマイルが眩しいこと。
たとえ最大手に勤めていようと、彼女達受付嬢には太刀打ちできない余裕と主役級の美しさに、見慣れているあたしまでくらくらしてしまうが、さすがは教育された受付嬢、この美しさに白旗をあげるどころか、敵意にも似た笑みを向けてくる。
「いらっしゃいませ」
そしてちらりと裕貴くんを見て、心なしかまた欲望が漏れ始めたが、なぜか最後のあたしを見て、嘲るような薄ら笑いが顔に浮かんだ。
あたしには、華という美しさがないのはわかってはいたけれど!
そんなに明らかに、態度を変えなくてもいいじゃない!
ぷりぷりしながら最後尾についたあたしは、皆と同じエレベーターに乗った。
「それで棗達は、シンフォニアでなにを聞きたいのかね?」
「HARUKAというインディーズの歌手についてですわ」
すると、瀬田さんは僅かに目を細めた。