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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
「いやあ、あの早瀬先生が会いに来てくれるとはね~。そろそろ移籍してもいい頃合いじゃないかい? 何年ふられているのかな、シンフォニアは」
「ははは。申し訳ありせんが、私はエリュシオン一筋ですので」
「やだなあ、色男で音楽の才能があって一途なんて、そこのお嬢様達、惚れちゃわない?」
突然に話を向けられたが、ひとりは男で、ひとりは須王にふられていて、もうひとりも昔にこっぴどくふられていたのに、また惚れてしまったという、なんとも単純でいて複雑なあたし達。
「そうですね、惚れてしまいますわね」
そう、余裕で答えたのは、勿論棗くん。
そして棗くんに促されて、女帝もまた顔を僅かに引き攣らせて言う。
「ええ、本当に惚れてしまいますね」
女帝はあたしのために恋心を押さえ込んだ。
それをあたしは、忘れてはいけない。
そして皆の目があたしに向いた。
特に須王がにやりと笑って見ている。
え? あたしもこの茶番に乗じないといけないの?
「あたしも……」
柚、皆と同じく愛想笑いでさらっと。
「あたしも早瀬さんに……」
そう思っているのに、顔が火でも吹いているかのように熱い。
「惚れてます……」
ふしゅう~。
そんな音をたてて、あたしは赤い顔で俯いた。
さらっと、さらっと、さらっと!
そう念仏のように心で唱えていたのに、なぜかあたしの行動は心とは裏腹に、必要以上に真っ赤になって、皆の前で告白してしまった形となる。
須王のこと、好き……だけど。
どうして演技が出来ないの、柚!
「おお~、これは三人とも早瀬さんのファンですな? 早瀬さんならどの女性を……」
いいから、あたしを見ないで欲しい。
どうすれば顔の熱が引くの?