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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
  

「上原さん」

 営業用の須王の声に、上目遣いだけで見つめた。

「ありがとう」

 そのにっこりと微笑むその顔は、茶化しているよりも素の須王に近く。
 
「嬉しいよ」

 月並みな台詞を吐くその美しい笑顔に、またあたしの顔がぼんと熱くなる。
 両手で頬を挟んでじろりと睨めば、愉快そうにそのダークブルーの瞳だけが笑っている。

 やっぱりからかっていたんだ。
 ピンポイントの名指しによる、おじさま達の揶揄の声を心の外に出して、心頭滅却すれば火もまた涼し。

 顔の熱さも涼しく……なんてならずに、あたふたしているあたしの耳に、須王の声が届く。

「ところで名高社長。インディーズのHARUKAはご存知で?」

 社長がなぜか、息を飲んだような音がした気がした。
 おかげで、顔の火照りが冷める。

「きみは、どこから……」

 なぜ焦るの?
 須王に取られると思って?

「ネットで有名ですから、シンフォニアならきっと行動に起こしているかと思ったのですが?」

「ネット……」

「ええ。そこの裕貴少年も興奮するほどの、ソプラニスタ。そのご様子では、ご存知ですね?」

「え、ああ……うん。今、一番シンフォニアが欲しがってる少年だ」

 すると瀬田さんが助け船を出してくれた。

「HARUKAの素性はご存知で? 家族が有名な音楽家とか……」

 家族が有名な音楽家ならあたしがあてはまるが、あたしにはHARUKAほどの音楽の才能はない。

 だが瀬田さんからの質問だったせいか、須王に対する警戒のような強ばりを解いて、今度は饒舌に話し出した。

「いや、それが……わからないんですわ、瀬田さん。HARUKAは都内の公園でアカペラのライブをするんですが、それも公式の地域のイベント情報をチェックしないとわからず、その前後に捕まえて話をしようにも、突然声量ある高い声で歌い出すものだから、ひとが集まってきて、それどころじゃなくなるようで。そして音が止むと同時に、宙をふわふわと飛ぶようにしていなくなると」
 
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