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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
「え、なになに、今日はなんの日なの?」
裕貴くんが身を乗り出してきた。
「ブルームーン。一ヶ月に二度満月が見える、珍しいものなんだって」
あたしが答えると、女帝までもが目をきらきらさせた。
「凄い、柚。物知りね」
「須王の受け売りで、あたしも知らなかったんだ、実は」
笑いながら須王を見ると、裕貴くんが笑った。
「なに、須王さん。柚と一緒にブルームーンを見て、ふたりの永遠の愛でも願おうとしてたの?」
すると須王はゲホゲホと咽せ込んだ。
「おま……ゲホゲホ!」
「須王さん、意外にロマンチストだよね。柚がそれを願って、須王さんを誘って見るならまだしも、須王さんが柚を誘って見ようとするなんて。やっぱり、尻に敷かれているよね」
「「はああああ!?」」
あたしと須王が反応したのはほぼ同時だった。
「あたし、この偉そうな王様を尻になんて敷いてないわ!」
「そうだ。少なくとも皆の前では敷かれていないはずなのに、『やっぱり』って何だよ!」
「須王、そこ!? 少なくともってなに!? あたし、いつでも敷いてないよ!?」
昔から強引に振り回してきたのは、須王の方。
須王と両想いになっても、彼の攻撃にやられているのはあたしの方。
「ははは、だけど須王さん、どこだろうと柚には頭上がらないじゃないか。横浜でのしょんぼり須王さん、動画に撮っておきたかったよ」
須王はまた咽せている。
「横浜? あたしがウサ子だった時? 須王、どうかしてたっけ?」
「柚が怒っただろう? そうしたら、須王さん……」
「裕貴っ!! お前なに……ゲホゲホゲホ、ゆ……ゲホゲホゲホゲホ!」
「ほらね、須王さんも肯定しているでしょ? 柚が尻に敷いているって」
「ちょっと、須王! そこで咽せてないでちゃんと否定してよ!」
と言いつつ、手を伸ばして須王の背中を摩ってあげると、棗くんが大爆笑。その度に車が高速道路で蛇行するものだから、プチスリルを味わう。