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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
女帝も笑いながら言った。
「でもさ柚。柚には早瀬さん、素の顔を見せているんだから、やっぱり柚の力の方が偉大じゃない?」
「あたし本当に偉大じゃないから! もう皆でなによ~、須王がへんなところでゲホゲホするからじゃない!」
すると立ち直ったらしい須王が、少し掠れたような声であたしに言う。
「お前、俺にふるか!?」
「当然! 助けてよ!」
「俺、知らね」
ぷいと横を向く須王。
「須王!! ……ねぇ、皆ほら! これであたしの尻に敷かれていると思う?」
車内はどっと笑いが湧いた。
……それはあたしの言葉を肯定するものではない笑いの気はしたけれど、つられてあたしも笑ってしまった。
会話内容はどうであれ、こうした弄ってくれて笑い合える仲間が過去いなかったあたしにとっては、嬉しくてたまらない。
あたしの日常から笑顔が消えた日々は、辛くてたまらなかった。
またこうして、笑うことが出来るなんて。
またこうして、あたしを輪の中に入れて貰える時がくるなんて。
嬉しい。
嬉しいよ。
「ちょっと、なんで泣くの、柚!」
「え、柚泣いちゃったの!?」
「おい棗、車を止めろ。俺が柚の隣に座る」
「あんた、高速乗っているのわかっているくせにそんなこと言う!? ちょっと危ないから、そこから後ろに行くんじゃないっ! どうしてあんたは、上原サンに関しては周りが見えないの、須王!」
「あははははは」
あたしは泣きながら笑った。
あたしはこの仲間達が好きだ。
勿論ここにいない小林さんも好きだ。
須王だけではない。
好きだと思えるひとと一緒にいれる今が、とても幸せに思う。
だから――。