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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
「早く終わらせたいね」
涙を拭いながら言う。
「大好きな皆を危険に陥れるすべてのことが。あたしもわけもわからない理由で、縛られたくないし」
敵は大きすぎて、目的も曖昧だ。
遥くんにしても、どうしてあたしの昔の記憶を刺激するのかよくわからないけれど、きっとあたしには対峙しないといけないことがあるんだろう。
きっと今までが安穏すぎた……そんな気がしているからこそ。
「あたし、皆と笑っていたい。皆が大好きだから、悲しい顔をさせたくない。誰も危険な目に遭わせたくない。……そう思うのにあたしは弱い。守って貰うばかりで、迷惑かけてばかりで、幸せを願っちゃいけないかもしれないけど、あたし……こうやって皆といれるのがとても幸せで、ずっと長く続けばいいなって思うんだ」
車の中はしーんと静まりかえっていた。
「ありがとう、そう思わせてくれて。ありがとう、あたしの傍でこうやって笑ってくれて。とっても幸せだよ、あたし」
やがて女帝が、両手を広げて横から抱き付いてきた。
「柚、私もこうしていられるのが幸せよ。私にもブレスレットをくれたのだって、嬉しかった」
そう、涙声であたしに言ってくれた。
取り巻きはいても、いつもひとりだった女帝と心を通わせあい、男性陣の困惑も考えずに、あたし達はわんわんと泣いてしまった。
後ろからは裕貴くんにあたしの頭をぐしゃぐしゃにされていたし、前部座席のふたりからは、ミラー越しちらちらと心配そうな目が送られたのはわかったけれど、……皆に伝わったかな。
あたしがどれだけ皆が好きで、どれだけあたしの日常に皆の笑い声を入れてくれたことに感謝しているか。
どれだけ皆と、未来をも共有したいのか。
……この時、あたしはなにかを感じたのかも知れない。
いずれ皆が離れてしまうような、そんな嫌な予感を――。