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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
用意された椅子に座ったが、しとしとと雨が降っている。
それでもあたし達は、願い事を叶えてくれるブルームーンが顔を出すのを、待ち続けた。……手を繋いで。
いつしか、あたし達は願いごとのためにブルームーンを待っているのではなく、ブルームーンの出現を願うようになる。
何十分待っただろう。
やがて、奇跡は起こったんだ。
「あれ、雨止んだ?」
雨音が止まった。
それと同時に、誰かが雲を吹き飛ばしたかのようにして、煌々と輝くブルームーンが見えたのだ。
「須王、ブルームーンだよ! 出てきてくれたよ!?」
あたしは須王の手を取って大喜び。
須王も仄かに顔を緩めて、笑みを零した。
すぐに雲に隠れてしまい、さらにまた雨が降ってきて、ブルームーンは二分見えていたかどうかの刹那の時。
だけど時間なんて関係がない。
雲間からブルームーンは出てこないと思いながらも、出てくると信じて待った結果、姿を現してくれたことに意味があると、あたしは思うから。
「信じていれば、必ず叶うんだよ!」
そう、ブルームーンが教えてくれたような気がして。
諦めるなと。
願い続けろと。
信じ続けろと。
「どんなに暗雲が立ちこめて、絶望的な状況でも、信じて願い続ける限りは必ず叶う。だから諦めないで、信じ続けようよ。不幸になるために、生まれてきたわけじゃないって。信じれば、絶対幸せになるんだって」
愛されなかった子供だったのは、お互い様。
愛に飢え、それでもあたし達は、誰かを愛することが出来た。
それって凄いことでしょう?