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エリュシオンでささやいて
第12章 Blue moon Voice
  

「ブルムーンって、凄いねぇ。見れて良かった……」

 興奮したあたしの口を、顔を傾けた須王が自分の口で塞いだ。

「柚が俺の腕の中で、笑っていられますように」

 涙で湿った願い事が届く。

 ……笑っちゃうくらい、あたしも同じことを考えていた。

「須王があたしの横で、笑っていられますように」

 そういうと、ふたりの額をこつんとぶつけあって、口元で笑った。

「真似、すんな」

「須王こそ」

「俺の方が先だからな」

「あたしの方が先だってば」

 ブルームーンにかけた願い事は、近くで見たいお互いの笑顔。
 くすぐったい気持ちになる。

 やがて至近距離で見つめ合っている目は熱を孕み、互いの唇から漏れる息が微かに乱れる。

 あたしは須王の背中のシャツをぎゅっと握って、目を閉じて薄く唇を開く。

 すると須王の熱い舌があたしの口の中に入ってきて、彼の存在感を彼の熱く甘い吐息と共に示した。

「んぅ……」

「ゆ……ず」

 音を立てながら夢中になって舌を絡ませていると、また窓が明るくなる。
 唇を重ねたままふたりで窓を見ると、ブルームーンが恥ずかしそうにたなびく雲の端から、こちらを覗いていた。

 今度は長く留まる気らしい。
  
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