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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
一体どこまで艶々と若返るつもりなのかしら。
そしてあたしは、どこまでよぼよぼになるんだろうか。
……それでも、須王を拒みたい気持ちがないのが、惚れた弱み。
須王によって開発されてしまったあたしの体は、須王にすぐさま反応してしまうから。
彼に抱かれたいと思う、いやらしい女になってしまうから。
「ん? 誰か着信来てるぞ」
誰かの携帯のバイブ音が聞こえ、須王が声をかける。
途端に棗くんと裕貴くんがポケットからスマホを取り出して頭を振り、須王も同じことを繰り返し、三人の目があたしに向く。
あたしに電話をかける奇特なひとなんて、ここにいる皆以外にいない。
それでもかかって来たというのなら、それは――。
「あたしだわ」
身を捩れば、あたしの大腿骨付近がウィーンウィーンと震えており、その元凶とも言える、震えるスマホをあたしは取り出す。
「女帝か小林さんかな」
そういえば、帰りが遅い。
どこまで買い物に行っているのかしら。
全員、ひとりひとりの連絡先はスマホに登録している。
友達がいないあたしとしては、絶対に失いたくない貴重な登録情報でもある。
この人数の中、連絡にあたしを選んでくれたことにほくほくとして画面を見れば、まったく知らない携帯番号が表示されている。
「え? 間違い電話かな。ど、どうしよう……」
間違い電話を装って、振込詐欺へと誘うこのご時世。
普段かかってこない電話に見知らぬ電話番号があるだけで、条件反射的に身構えてしまうあたしは、おろおろとした。
そんなあたしに須王は、剣呑に目を細めて言う。
「棗」
「こちらはOK。上原サン、これ、充電の部分に差し込んで」
「う、うん……わかったわ」
なにやら棗くんがカタカタとキーボードを叩くパソコンと繋いだ、充電USBのような長くて細いケーブルを渡されたため、ずっと震え続けるスマホに慎重に接続する。
「柚。スピーカにして出ろ」
スマホは依然、見知らぬ電話番号からの着信を示している。