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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice


「わ、わかった。いくよ?」

 頷く皆を見ながら、あたしは電話に出る。

「もしもし」

 すると、電話から流れたのは――。

『ねぇ。お姉さんのパンツ、何色?』

 ……あたしは、脱力した。

 さらに言えば、変声機と思われる機械じみた声にして、相手が誰だか特定されるのを防ごうとしているのが、姑息すぎる。

『ねぇ、何色だよぉ?』

「……」

 なぜ、あたし?
 そんなの、不特定多数に向けた間違い電話だからだろう。

 ねぇ、変態さん。
 どうしてよりによって、友達が少ないあたしにかけてくるかな。
 もしかして、変態発言から友達になろうとしているとか?

『パンツだよぉ、パンツ。あれ、もしかしてノーパン?』

 馬鹿にされているようで、イラッとした。

 黙って切ろうとしたあたしに、須王が手を出して制止する。

 え、答えろということ?
 
 ジェスチャーでそう尋ねると、須王は顰めっ面をしてあたしの頭を叩く。 
 どうやら不正解だったらしい。

『それともパンツ、はき続けて黄ばんでるとか? ちゃんと洗って乾かさないとカビ生えちゃうよ?』

 カチンと来たあたしは、思わず反応してしまう。

「失礼な! あたしのパンツは清潔な真っ白の……ふごふごふご!」

 須王に口を塞がれ、須王の人差し指が一本あたしの前に立つ。
 これは、黙っていろということらしい。

 黙ってなにを聞きたいんだろうと思えば、パソコンの前に座ったままの棗くんも神妙な顔でなにかを聞き取ろうとしている。

 なに?
 変声機を使った変態のなにを?


 電話の向こうもこちらも、シーンと静まり返った時、電話の向こう側でなにかの曲が流れている気がした。

 本当に微かな旋律だけれど。

 須王があたしのスマホの音量を大きくした。

 そして――。

 須王と棗くんが言葉を漏らすのは同時だった。

「「『殺生(せっしょう)』」」

『あははははははは』

 すると電話から笑い声が聞こえ、ぶつりと電話は切れた。
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