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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
須王が折り返し電話をかけたが、電源が入っていないことを知らせるアナウンスしか流れなかった。
「逃げられたな」
あたしは、舌打ちする須王からスマホを奪い、ネット検索をする。
……それは予想通り、十悪のひとつ。
ではあれは、ただの変態ではなく、わざと電話がかかってきたというのか。いまだ須王と棗くんを苦しめる、組織の者からなのだろうか。
つまり、また犠牲者が出るという予告?
牧田チーフ達を思い出すと、ぞくりとする。
「棗、どこからかけられたのか、逆探知は?」
なに、このケープルみたいのは逆探知出来るものなの?
これを差し込めば出来てしまうものなの?
いまだ棗くんが、どんな魔法の道具を隠し持っているのかわからない。
だって逆探知って、よくドラマとかで警察がヘッドホンみたいのをして、画面と睨めっこしているものだよね?
「今、出たわ」
棗くんがカタカタとキーボードを叩いていた手が止まる。
「どうした?」
須王が、黙っている棗くんの元に行きパソコンを見ると、押し黙る。
「なんだよ、一体どこだよ」
裕貴くんもあたしも画面を覗き込んだ。
その地図は――。
「どうして俺ん家……?」
なぜ、裕貴くんの家から?
「裕貴の家に、また行こう」
……嫌な予感がする。
どうか、どうか。
あの優しい裕貴くんのお母さんが、おばあさんが。
無事でありますように。
***
エリュシオンをお待ち下さっていた方々へ
再開が本当に遅くなってしまい、申し訳ありません。
本当は、「アムネシアは蜜愛に花開く」が完結する前に再開しようと思ったのですが、完結後になってしまいました。まだあの頃のペースが掴められず、何度も書き直してこれだけになってしまいましたが、少しずつ戻していきたいと思いますのでお許し下さい。
完結に向けて書いていきたいですが、これから別物語の書籍化作業が入ります。前に経験しているので不安はないのですが、佳境時には集中するために少し休みを頂くことがあるかもしれません。
私の心身を心配下さる優しい読者様が多いので、そういうこともあることだけ、先に告知させて下さい。
色々とご迷惑をおかけしてすみませんが、どちらも頑張りたいですので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。
奏多 拝