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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
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「家電も母ちゃんやばあちゃんの携帯にも繋がらない。LINEも既読にならないし」
棗くんが運転するアウディの中、後部座席に座るあたしの横で、裕貴くんが泣きそうな声を出した。
「裕貴、親父や姉ちゃんはどうだ?」
須王の声に、裕貴くんはすぐに答えた。
「連絡はしたけど、あのふたりはすぐに返答はこないんだよ。つーか、連絡来ていたら真っ先に俺にも連絡寄越すよ」
連絡――。
その連絡はどんな類いのものなのか、考えたくない。
「でもね、裕貴くんの家でなにかあったとは限らないわ。家の中というわけではないんでしょう? あの逆探知」
棗くんが右折しながら答える。
「そうね。半径200mってとこかしら」
……それ、かなり性能がいいということ?
それでも100%の精度とは限らない。
もしかすると、裕貴くんの家の前の道路から電話を掛けたのかも知れないし。
途中女帝からLINEで、小林さんとのショッピングが渋滞に巻き込まれてしまったと連絡がきたため、あたしは、変な電話がかかってきて、裕貴くんの家の安全を確かめにいくとだけ簡潔に書いた。
棗くんのドライブテクニックのおかげで、都内の裏道をぎゅんぎゅんきゅるきゅると移動する高級外車は、思った以上に早く裕貴くんの家に着いた。
よくドラマなどで見る、黄色いKEEP OUTのテープがかかっていたりパトカーや救急車はとまっておらず、人気もなかったため、まずは安心しながら裕貴くんのお宅にお邪魔する。
だが――。
ふわりと匂うのは、柘榴の香り。