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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
須王と棗くんが瞬時に武器をしまうと共に、あたしは棗くんが片足を伸ばしてお姉さんの足をひっかけるのを見た。
そして棗くんが須王が目で合図を送ると、須王は片手を伸ばして彼女を抱き留め、にっこりと美しい微笑を顔に湛えて言った。
「弟さんをお世話をしています、早瀬須王と言います」
こんな時でも王様は、裕貴くんにお世話になっているとはお世辞でも口にせず、そして確か……須王ファンだったはずのお姉さんは、案の定、ぼっと顔を赤くした。
……これは、家族揃って同じ反応だ。
そのあからさまな好意を受取りながら。なぜか抱き留めたままの須王に、ちりちりとしたものを胸の奥に感じるあたしだったが、そこが問題ではない。
「姉貴、母さんとばあちゃんは!?」
すると彼女は答えた。
「ああ、いつものばあちゃんの病院への付き添いよ。折角の休みなのに、寝ている私を起こして出かけたわ」
「病院!? だから携帯の電源切っているの!?」
元々ふたりはこの家にいなかったというのなら。
「だったら姉貴、この家に誰か来た!?」
「ええ、来たわね」
彼女は即座に答える。
「誰だよ!」
「さっちゃん」
あたし達は顔を見合わせた。
「さっちゃんが来て、いつもの浄化だかをして帰ったよ」
さっちゃん――須王のお母さんがまたここに来たの?