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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
 
 そんな時、あたしのハンカチで轡(くつわ)中のドーベルマンが、クゥンと弱々しい声を出したため、皆で宮田家かかりつけの動物病院にドーベルマンを連れ、傷の手当てと共に胃の洗浄をして貰い、可哀想なケルベロスは点滴と、専用の轡をつけて数日入院となった。

 獣医さんは、弾痕にも驚いていたけれど、そこは棗くん、話術ですんなりとかわして、銃弾を取って貰った。

 病院からの帰り、裕貴くんの携帯が立て続けに鳴った。

 それは安否を気にして裕貴くんが連絡をとっていた、お母さんとおばあちゃん、本当のお姉さん達、お父さんからだったらしい。

「なんだよもう。なんで後から一斉に連絡寄越すんだよ」

 裕貴くんはぷりぷり怒りっているが、ほっとしたようで、それはあたし達も同じ心地だ。

「ちょっと、スイーツでも食べて一息いれよう」

 帰りにコンビニに寄り、あたしのおごりでプチデザートを買い、宮田家にお邪魔する。勿論再度念入りに、平和とは縁遠いものを探索した上でリビングで、お母さんとおばあちゃんのお戻りを待つことにする。

 やはり、無事を確認したかった。

 ちなみにリビングの割れた窓は、棗くんの電話一本で新しい窓が届けられ、配達人を頑なに中に入れない須王と棗くんがせっせと取り付けた。
 これは外から銃弾が撃ち込まれようとも平気なものらしい。

 元々嵌め殺しになっている窓は、一緒に運ばれた透明な防弾シートを中から貼る。これは特殊素材だそうで、一般には売られていないとか。
 
 電話一本、まるでそばの出前でも頼むように届けさせ(どこから?)、取り外した窓を回収させる棗くんは凄い。

 外から見れば、以前と変わりがない家だけれど、実際は堅固に生まれ変わった。須王と棗くん曰く、バズーカー砲でも持って来ない限り、窓硝子からの侵入は不可避らしい。同時に空き巣にも狙われる心配はないと笑う。
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