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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
「なあ裕貴。このことは、お袋さんやばあちゃんに言うな。下手に心配させるのは、心労をかけさせるだけだ」
「うん、そうするよ。でも今日みたいに、病院とか買い物に出歩くのはどうしよう」
「恐らく、ふたりが今無事に帰ってこれるのなら、狙われねぇだろう」
「根拠はなんだよ」
「勘」
……王様は、人差し指でコメカミをぽんぽん叩いて言い切った。
しかしその目は怜悧な光を湛えており、冗談ではないことはすぐわかる。
「今までの流れでは誰かが十悪の犠牲になっている。わざわざ『殺生』を選んで曲を聞かせたということは、俺らが接触した誰かが殺されたという可能性が高いが、死体がないとなれば今までの流れとはなにか違う」
そうだ。
今まで十悪に該当するものを犯した(と思われている)牧田チーフ、美保ちゃん達は、既に断罪がなされた後に音楽が流れていた。
しかも相手から直接招かれたわけではなく、あたし達が偶然にその場所に行き当たった時もあったのだ。
「犠牲者の裕貴の家族であったのなら、こんな面倒なことせずに死体を置いておけばいい。俺らを呼び出す意味がわからねぇよ」
「もしも……呼び出された場所が違ったとしたら?」
棗くんが怖いことを言う。
「看護師もいたし、病院?」
「まさか、遥がっ!?」
「いや、その可能性はねぇと俺は見る。ほっとけきゃ、そのうちまた、遥に会いに病院に行くのはわかるだろう。わざわざこのタイミングで、呼び寄せる意味はねぇよ」
須王は目を細めた。
「それにここは見張られていたから、あの看護師は連れ去られた。呼び出されたのはここだ。問題は、なぜここなのか、だ」