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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice

「大体さ、ただの宗教がなんで他人にそっくりな特殊技術なんて披露しなきゃなんないんだよ。あんなそっくりだったら、絶対本物だと思っちゃうよ。だったら他人になりすますつもりだったとか?」

「上野公園……」 

 呟くあたしに皆の目が向けられる。

「ピエロが頭落としたの、あれもこの技術だったのかな」

 だからあたしは思ってしまう。
 頭が転がった天使もまた、ギミックではなかったのかと。

「なんのために?」

 そうだ。
 なんのために、あたしはそれを〝見た〟のか。
 なんのために、あたしにそれを〝見せた〟のか。

 わからない。

「ただなにか象徴性はありそうね」

「ああ。偶然の一致だと片付けられる奴らじゃねぇしな」

「本当に姉貴そっくりだったんだよ、あれ。姉貴をよく知らなければ出来ないと思うんだけど、だとすれば、姉貴の近くにいた人間が怪しいということかな」

「裕貴の姉貴の職業は?」

「モデル」

 ……確かに綺麗だった。
 でもモデルということは……。

「個人的に親しくなくても、写真なりが手に入れば顔の造作の真似なんて容易いな。動画でもあれば声も動きも真似出来る。操られながらでも訓練すれば、素人でもなんとかなるだろう」

 不特定多数の彼女の観客から、誰かなど特定することは出来ない。

 いや、待てよ。
 靴跡がある。
 確か棗くんが写メを撮った後、床磨きをしたんだ。
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