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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
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『殺生』に狙われていたのは、女帝と小林さんだった!?
女帝のスマホに電話をしたが電源が入っていない旨のアナウンスが流れ、LINEは既読になることもなく。それは小林さんの電話も同じだった。
あたしから血の気が引き、ぶるぶると震えが止まらなかった。
これは、スマホを見ていなかったあたしのミスだ。
あたしが女帝を危機に陥らせた。
あたしは美保ちゃんが吊り下げられていた時、先に見つけていた女帝は、ずっと吐き続けていたことを思い出す。
そういうのが見るのだけでも苦手の女帝を、あたしの唯一出来た同性の友達を、あたしがこの手で――!!
「柚、大丈夫だ。大丈夫だから」
気づけばアウディの助手席に座っていたあたしは、運転する須王が伸ばした片手で、シートベルトの許す範囲で彼の肩に引き寄せられる。
鼻の奥が熱くなり、堪えていたはずの涙がぽろぽろと零れる。
「ああ、くそ。運転していなければ……」
須王の指があたしの涙を拭い、そして冷たい手をぎゅっと握られた。
じんわりとした生を伝える熱が、今は切なくて堪らなくて。
なぜあたしは須王とふたりで車に乗っているのか、少し前の裕貴くんの家での会話をぼんやりと思い出した。
――確か、スタジオには三芳の車がなかった。ということは、三芳の車で小林を乗せて出ていたのか。だったら、棗……。
――ええ。GPS発信器をこっそりつけていてよかったわね。車に置いた私のパソコンからなら、それまでの足取りとかより詳細はわかるけど、おおまかなものならスマホでもわかる。
須王と棗くんは、秘やかにスタジオに出入り出来る車すべてに発信機をつけ、もしなにかトラブルがすぐ駆けつけられるようにしていたようだ。
プライベートなんてあってなきに等しい現状、それで本人の安否の確認は出来ずとも、少なくとも車が動いた形跡があったのなら、最終地点は追える。
――病院の近くの、ショッピングモールを示しているわね。
それは、あたしがパワーストーンを買った、小林さんの奥様がいるお店が入っている場所だった。