この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
『上原サン、返信で遥のこととか書いた?』
「いいえ。あたしが書いたのは、変な電話がかかってきて、裕貴くんの家の安全を確かめにいくとだけ……」
LINEにはちゃんとその文面には既読になっている。
「柚、それに対しての返信は?」
「ないわ。既読はついているけど」
『しかも今はショッピングモールにいるけれど、病院からショッピングモールに行くまでもうひとつ、立ち寄っている場所がある』
それに答えたのは、ハンドルを片手で握る須王だった。
「……裕貴の家か?」
『須王、正解。10分間ほど停車しているようね』
「ええええ!? あたし達が今までいた裕貴くんの家に、女帝達も来ていたってこと!?」
「棗。この車にも発信機をつけているだろう。これと三芳の車のルートを同時にシミュレートして見てくれ」
『今、そう指示を出しているわ。……と、準備出来たようね、早送りで見てみる。……ふぅん?』
やがて棗くんが愉快そうな声を出した。
愉快そうでもそれが愉快ではないだろうことは、経験からして悟っている。これは……。
棗くんの代わりに、なにも見ていない須王が言う。
「俺達が裕貴の家に到着する前に、三芳の車は病院から裕貴の家に着き、そしてそのままショッピングモールで停まった。柚が三芳からのLINEを受けた時は、裕貴の家からショッピングモールに向かっていた……か?」
『正解』
「な、なななな!」
正解出来る須王も凄いけれど、問題はその内容だ。
少なくとも裕貴くんの家になにか用事があるというのなら、LINEであたしが裕貴くんの家に向かうと言った時に、実は忘れ物があって行って来たとか、女帝なら返信があってもいい。
どうして、知らないふりをしたの?
どうして、そんなところに行ったの?