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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice
 
『上原サン、返信で遥のこととか書いた?』

「いいえ。あたしが書いたのは、変な電話がかかってきて、裕貴くんの家の安全を確かめにいくとだけ……」

 LINEにはちゃんとその文面には既読になっている。

「柚、それに対しての返信は?」

「ないわ。既読はついているけど」

『しかも今はショッピングモールにいるけれど、病院からショッピングモールに行くまでもうひとつ、立ち寄っている場所がある』

 それに答えたのは、ハンドルを片手で握る須王だった。

「……裕貴の家か?」

『須王、正解。10分間ほど停車しているようね』

「ええええ!? あたし達が今までいた裕貴くんの家に、女帝達も来ていたってこと!?」

「棗。この車にも発信機をつけているだろう。これと三芳の車のルートを同時にシミュレートして見てくれ」

『今、そう指示を出しているわ。……と、準備出来たようね、早送りで見てみる。……ふぅん?』

 やがて棗くんが愉快そうな声を出した。

 愉快そうでもそれが愉快ではないだろうことは、経験からして悟っている。これは……。

 棗くんの代わりに、なにも見ていない須王が言う。

「俺達が裕貴の家に到着する前に、三芳の車は病院から裕貴の家に着き、そしてそのままショッピングモールで停まった。柚が三芳からのLINEを受けた時は、裕貴の家からショッピングモールに向かっていた……か?」

『正解』

「な、なななな!」

 正解出来る須王も凄いけれど、問題はその内容だ。
 
 少なくとも裕貴くんの家になにか用事があるというのなら、LINEであたしが裕貴くんの家に向かうと言った時に、実は忘れ物があって行って来たとか、女帝なら返信があってもいい。

 どうして、知らないふりをしたの?
 どうして、そんなところに行ったの?
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