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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice

「罠の可能性もあるけどな」
「それでもそれは、奈緒さんの意思じゃない。奈緒さんは、友達のために今も戦っているとあたしは信じる」
生きている。
絶対、彼女が死ぬものか。
DEAD OR ALIVE?ではなく、ひたすらALIVEを信じてきっぱりと言い切ったあたしは、握った拳を震わせた。
「そうだな。柚が初めて出来た友達だし、パワーストーンのブレスレットの守護もあるだろうしな」
須王が横目であたし見ながら、美しく微笑んだ。
こんな時だというのに、どきっとしてしまったあたし。
あたしが運転していたら、絶対アクセルを深く踏み込んで大惨事だっただろうと思う。
この王様の艶は、身構えていないと本当に心臓に悪い。
『っと、裕貴の母親と祖母が戻って来たわ。殺気もおかしな点もなさそう』
棗くんが言うなら安心だ。
『今、裕貴に代わるわ。その間再度私がよく見てみる』
そして電話は裕貴くんの声になった。
『柚、須王さん! 大丈夫だったよ。いつもの定期検診だったらしいけど、急に担当医が学会でお休みになって代わりの先生がとんちんかんなことばかり言ってて、それで戻りが遅くなっちゃっていたみたい』
裕貴くん、無事が確認出来て本当に嬉しそうだ。
「病院あるあるだよ。先生代わった途端に、おんなじ説明をしなけりゃいけないことも沢山あったし」
亜貴の時がそうだった。
なんのための紹介状やカルテだと何度も思ったものだ。
「大きな病院なら特にそういうものだよ。たらい回しにされるし」
『あれ、そういえばどこの病院に行ってるんだろう。ねぇ、母ちゃん。どこの病院に……え、遥のとこ!?』
なんと、遥くんの病院に通院しているらしい。

