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エリュシオンでささやいて
第13章 Moving Voice

そんな時、ピーピーという電子音が聞こえて、あたしと須王と顔を見合わせる。こちら側の問題ではなく、電話の向こう側から聞こえてくるようだ。
『あれ、棗姉さん、パソコンから音が鳴っている』
そして棗くんの声が再び聞こえた。
『……須王、行き先変更』
「どうした?」
硬質な棗くんの声に、思わずごくりと唾を飲み込む。
『車が動いている』
ピーピーという電子音は、まるで生命の危機を知らせる心電図のように頭の中に響き、脳裏に赤い警告ランプがぴかぴかと光る。
『車とかち合えるようにナビをするわ。そこから三一九号線に乗って』
「了解」
須王はハンドルを右に切った。
なにもわからない中でひとつ確かなことは、車が動いているということは、運転している人間がいるということだ。
誰が車を運転しているのだろう。
女帝や小林さんか、それとも――。

