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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「……柚」

 突如、迷路を難なく歩いていた須王が足を止める。
 須王の手を握って、ドキドキしながら歩いていたあたしの足も止まる。

 不意にダークブルーの瞳が細められ、須王の声が響く。

「……やばい」

「へ?」

 やばい、とは?

「朝霞以外に、三人の気配が強まった」

「さ、三人!? 女帝と小林さんで二人だよ!?」

「この感じ……」

 ダークブルーの瞳が剣呑な光が宿る。

「組織の連中だ」

「……っ」

 シートの中は閉塞された世界だ。
 逃げだそうにも、シートを捲るそのすきに、敵の攻撃がなされるだろう。

 須王は片手に、取り出したアーミーナイフを握った。
 
 もし三人が、銃弾で襲ってきたら?

 あたしは、ごくりと唾を飲み込む。

「俺、躱せる自信ねぇわ」

 それは――須王らしくない、言葉で。

「接近戦でも、怖くて……」

「は!?」

 王様らしくない発言に、あたしは動揺してしまう。

 一体どうしたんだろう!!
 これ、須王だよね!?

 まさか棗くんがいないからとか?
 複数をひとりで相手にしたことがないとか?

 まるで弱々しい子供のように、ダークブルーの瞳は揺れる。

「柚……」

 須王は泣きそうな声を出す。


「俺、死にたくねぇ……っ」


 そ、そんな敵がいるの!?

 ボスの朝霞さんを超えて、ラスボス!? 裏ボス!? 裏ラスボス!?

 どのボスが本当のボスなのかわからないけれど、あたしから出た言葉は――。

「ほいきた! あたしに任せて!」


 ばーんと掌で胸を叩いたのだった。

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