この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice
……なんだろうね。
こんなに弱気なレア須王を見ると、自分がしっかりしないといけないと思うんだ。
別にあたしに策があるわけではない。
だけどあたしは鼻息荒く、大丈夫だよと頷いて見せると、突然須王が笑い出す。
「え?」
「ぶはははははは」
その大笑いは、忍月コーポレーションの宮坂専務にも似て。
「なんなんだよ、お前、その自信。どこからくるんだよ。〝ほいきた〟ってなんだよ」
弱音を吐いた男が、そうのたまった。
そして――。
あたしに笑い顔を向けたまま、須王はナイフを横に飛ばしたのだ。
それはまるで須王の体の一部のように飛んで行き、カラーンとなにかがぶつかった。
共に宙を飛ぶのは――黒い銃。
銃。
銃?
そしてナイフはそのままシートを切り裂くようにして、銃ごと外に消えた。
それに呆気にとられている瞬間、須王があたしの頭を掌で強く押さえ込み、須王と共にしゃがみ込んだ瞬間に、頭上が空を切る。
そして須王は、しゃがんだまま、片手だけで地面を叩き付けると同時に、斜めにした体を浮かせると、そのまま長い足をぶんと振った。
ばきっという、なにやら不穏すぎる、なにかが折れたような音がしたと同時に、うっという呻き声がする。
「柚、そのまましゃがんでいろよ」
また頭上は、空を切る。
それから連続で五回、そんな不穏な音が続き、二種の音色で悲鳴が奏でられた後、音がすっと消えた。
頭上が怖いあたしは、両手で頭を抱えてふるふる震えていたが、まさかやられたのは須王ではないのかと思って、慌ててそちらの方を見ると、須王が前髪を掻き上げ、やたら清々しい美貌を魅せている。
そしてずさりと、足元に落下したのは、歪な輪郭をした黒服の男ふたり。
男達の眼球がぐるっと動き、白目となり、口から白いあぶくが生じて
思わずひっと須王に抱き付けば、須王は笑ってあたしの頬を指でつつく。
「誰が誰を守るって?」