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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

 ……なんだろうね。
 こんなに弱気なレア須王を見ると、自分がしっかりしないといけないと思うんだ。

 別にあたしに策があるわけではない。
 
 だけどあたしは鼻息荒く、大丈夫だよと頷いて見せると、突然須王が笑い出す。

「え?」

「ぶはははははは」

 その大笑いは、忍月コーポレーションの宮坂専務にも似て。
 
「なんなんだよ、お前、その自信。どこからくるんだよ。〝ほいきた〟ってなんだよ」

 弱音を吐いた男が、そうのたまった。

 そして――。

 あたしに笑い顔を向けたまま、須王はナイフを横に飛ばしたのだ。

 それはまるで須王の体の一部のように飛んで行き、カラーンとなにかがぶつかった。

 共に宙を飛ぶのは――黒い銃。

 銃。

 銃?

 そしてナイフはそのままシートを切り裂くようにして、銃ごと外に消えた。

 それに呆気にとられている瞬間、須王があたしの頭を掌で強く押さえ込み、須王と共にしゃがみ込んだ瞬間に、頭上が空を切る。

 そして須王は、しゃがんだまま、片手だけで地面を叩き付けると同時に、斜めにした体を浮かせると、そのまま長い足をぶんと振った。

 ばきっという、なにやら不穏すぎる、なにかが折れたような音がしたと同時に、うっという呻き声がする。

「柚、そのまましゃがんでいろよ」

 また頭上は、空を切る。

 それから連続で五回、そんな不穏な音が続き、二種の音色で悲鳴が奏でられた後、音がすっと消えた。

 頭上が怖いあたしは、両手で頭を抱えてふるふる震えていたが、まさかやられたのは須王ではないのかと思って、慌ててそちらの方を見ると、須王が前髪を掻き上げ、やたら清々しい美貌を魅せている。

 そしてずさりと、足元に落下したのは、歪な輪郭をした黒服の男ふたり。

 男達の眼球がぐるっと動き、白目となり、口から白いあぶくが生じて
 
 思わずひっと須王に抱き付けば、須王は笑ってあたしの頬を指でつつく。

「誰が誰を守るって?」
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