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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「す、須王が怖いというから……っ」

「あんなの冗談に決まってるだろう? 思惑通り、惰弱な男には銃を向けるまでもないと判断してくれたようで、すぐに片付いた」

「は、はあ」

「だけど殺すつもりはなかったようだ。殺すつもりなら、もっと上を出せばいい。こいつらはいいとこ、俺の動きを制するだけの役目だ」

「いやいやいや。十分な戦闘だったよ?」

「それでも、俺のマンションのように爆弾で吹き飛ばしたりはしようとしてねぇ。……逆にそれがひっかかりもするが」

 慣れとは恐ろしいが、物足りなさを感じる時点で、既に環境は異常なのだ。

 須王は腕時計を見ると、堅い顔をして言った。

「中に行くか。最後のひとりと朝霞は奥にいるようだ。小林と三芳の安否を確認しよう」

「ええ」
 
 そして、あたしと須王は、エリュシオンがあった場所で、暗い深層に歩み行く。まるで冥界の深層に赴いているかのような錯覚を覚えるあたしは、須王の服をぎゅっと掴んだ。

「手じゃなくていいの?」

 こんな時に須王が揶揄して笑う。

「あたしが邪魔しちゃ悪いもの」

 須王の武器はなにもない。

 だからこそ須王の妨げになりたくないあたしは、須王の温もりを捨てたのだった。

 やがて見えてくるのは、

「出て来たぞ」

 足場で囲まれた空間で。

「やあ、ふたりとも。随分と早いね」

 中央に、ブロックが置かれており、その上に置かれたパイプ椅子に座っていた朝霞さんが笑った。

 そう、昔のような爽やかな笑みで。

「朝霞さん……」

 ……それでも昔とは違う。
 時間は逆戻りは出来ないのだ。

「……っ」

 皮膚が爛れた、赤くなったケロイドの顔は、間近で見ればホラー映画に出て来そうなほど、無残なもので。

 どう声をかけていいのかわからないあたしが、須王の後ろから目を細めてそらせると、朝霞さんは僅かに痛々しげに笑った。

  
****

読者様へ

大変お待たせしました。
ようやくバタバタしていた作業が中休み、また時間を見ながら再開します。
本当にお待たせしていてすみませんでした。

尚、更新状況などは、HPのブログで書きたいと思いますので、よろしくお願いします。

奏多
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