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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
「うわっ、エフェクターギターのもある!! あ、ワウだ」
そんなあたしの頑張りを知らずして、しゃがみ混んだ裕貴くんは、ケーブルが入っていた袋から、片手で掴める長方形サイズの、色とりどりのエフェクターを見て、歓声を上げた。
ワウというのはエフェクターのひとつで、あたしが持ってきたのはペダル式になっていて、演奏しながらリズムに乗せて片足でペダルを踏めば、その踏み方により音がワウ、ワウと喋っているように聞こえる効果だ。
よくもこんなものを開発したと思うけれど、結構メジャーなものだ。
「ワウは必要ねぇだろ。ここのPAはあまり腕がよくねぇから、1.6kHzと6.4kHzがハウリングしやすい。イコライザーの1.6と6.4を下げ気味で、400をちょい上げろ。で、エンハンサーを繋げ」
エフェクターは複数個繋ぐことが出来るそうだ。
繋ぐ順序で効果が違うという話を聞いたことがある。
どう繋げればどういう効果が出るのか、残念ながらあたしには知識がないが、イコライザーについているつまみで、特定の音(周波数)の強さを調整するらしい。
「PA、よく聞いてなかった、俺……」
「ハウリング聞くだけでいらっとするから、こちらでも出来る防衛策だ」
ちなみにPAとはPublic Addressに加えてProffesional Audioの意味も付加しつつある、裏方で、演奏者のアンプら拡声器から出る音だけではなく、会場全体に響かせる音声を調整したり音色加工する。
PAの善し悪しによって、歌声や演奏をよりよく聴衆の耳に届けることが出来るのだ。
ハウリングとは、マイクを通した音がキーンと聞こえてしまう、あれだ。
つまり腕の悪いPAのハウリング対策に、ここでハウリングしやすい特定の周波数を下げることで相殺して、ハウリングを防止しようとしているらしい。
……早瀬だって、ちょっとしか聞いてなかったんじゃない?
それでどの周波数か、わかるわけ?
「シンセ、セッティング完了しました」
緑色の液晶部分が光る。
どうだ。ド素人でも出来たんだぞ。
……鍵盤見るのが、複雑だけどね。