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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice
 
 朝霞さんは、静かに口を開く。

「知っていたか、上原。前久我社長と勤めていたこの聖域は、オリンピアの力で売却されないようにと守ってきていたんだ」

「あたしが見に来た時は土地でした。だけど工事をしているということは、ここは朝霞さんの手から離れたっていうことですか?」 

「ああ。もうすぐにでも工事は始まる。エリュシオンは、なかったことにされる……」

「オリンピアを押さえる、誰の力が動いた? 組織は表に出ねぇだろ」

 すると朝霞さんが、まっすぐに須王を見つめて言った。

「忍月建築」

 須王の目が細められる。

「外の看板には、忍月栄一郎がトップの建築会社の名前が記載されている」

 ……また出て来た。

 忍月栄一郎――。

 忍月コーポレーションの副社長かつ、音楽協会の副会長の肩書きを持つ男。
 遥くんが病院で使用している特別室に、遥くんの担当医と思われる坪内医師に患者を斡旋していた病院の理事長。

 なぜ、エリュシオンを潰そうとするの?

「つまり、組織に忍月がいるということか?」

 その硬質な声音には、並々ならぬ悪意すら感じて。

「早瀬須王」

 朝霞さんは、須王の言葉を打ち消すようにして言う。

「お前のいた『エリュシオン』は、最悪な形で復活した。新生したエリュシオンという楽園は、音楽に関係する者達にのみ門を開いた。奇しくも、お前と上原がいる、木場のエリュシオンとは真逆に」

 朝霞さんの謎の言葉に、須王は目を細める。

「エリュシオンは、柘榴を求めている」

 あのしゃぶしゃぶ店で、確かこんな話題があった。

――俗説によると柘榴は人間の肉の味がするらしい。だから食えなくなった子供の肉の代わりに食べていたとか。そうなれば、匂いなんてないように思えるよな?

――柘榴の実の中には沢山の実があり、たくさんの種が詰まっている。そこから豊穣や多産をもたらすものとされているらしい。ただし、ギリシャ神話では、不吉な象徴みたいだね。

――死せる者の世界では、新しい命は必要がない。

――ひとの命すら認めないのが、冥府〝エリュシオン〟だ。

 そして須王が、あたしを狙ったのは誰かと聞いた途端、真理絵さんの起爆装置にスイッチが入っていた。

 つまり、柘榴とは……?


 朝霞さんはあたしを見る。


「――上原が柘榴だ」

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