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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

「な、なぜ? あたしが狙われる目的がよくわからない!」
「早瀬須王、お前が解け。至極合理的な私欲によって、エリュシオンは開かれている。上原が必要とされている意味がわかった時、自ずとエリュシオンの黒幕もわかるだろう」
「〝天の奏音〟の役割は?」
「音だ。エリュシオンは音を奏でる者に開かれている」
なぜ朝霞さんは、こうも核心を言える?
彼が裕貴くんの家に来たあの靴跡を残した男なら、そうまでして姿を隠したというのなら、なぜ朝霞さんは――。
「なぜ、そんなことを俺達に言う? 三芳と小林を拉致しておいて」
すると朝霞さんは悲しげに笑った。
「……捨て置けるだろう?」
「え?」
朝霞さんは、上擦ったような声を張り上げた。
「気をつけろ。お前達の中に……くっ」
朝霞さんが、おかしな声を上げて顔を顰めた時だ。
焦げ臭い匂いがしたのは。
彼の座っている椅子の下、ブロックから火が見える。
「朝霞さん!?」
ブロックは並べられてるものだと思っていたけど、あたしが見ているのは長方形の側面だけであり、上から見たら多分……中央がスペースになっていて、火が出るようなものがおかれているのだろう。
それはきっと、朝霞さんは最初からわかっていたんだ。
よく見れば朝霞さんの椅子と彼の足は、秘やかにピアノ線のようなもので縛られていた。
彼もまた、真理絵さんのようになにかの仕掛けの犠牲になっている――。
「朝霞――っ!」
「朝霞さんっ!」
火は大きくなっている。
声を上げずに天井を見上げる朝霞さんの顔は、苦悶に満ち。
このままなら、体が燃えてしまうじゃないか。
朝霞さんを助けようと、あたしと須王が動いた時、朝霞さんの強い声が聞こえた。
「来るなっ」
なぜ。
なぜ。

