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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

命の尊厳に優劣はない。
どちらかが死に値するなど、誰一人として断罪する権利はない。
それでも答えないと、朝霞さんが危ない。
まだ椅子は燃えていないが、相当熱いはずだ。
匂いが変わってきている。
どうすればいい。
考えろ。
考えるんだよ、柚!
どうして、あたしの頭は動かない。
どうして、頭の中が真っ白なの!
ふっと、なにかの名前が浮かぶ。
だからあたしは、縋るようにしてその名前を叫んだ。
「須王、須王っ」
それは神に祈る罪人のように。
「守って……。2人を守ってぇぇぇぇ!」
「……棗!」
……なぜか、須王は棗くんの名前を呼ぶと、片手を上げて高く飛び跳ねた。
須王の不可解な動きに、頭の中一杯にハテナマークが浮かぶ。
突然指名されて、彼はとち狂ったのだろうか。
この場での頼りにしていた綱が、今ぶっつりと――。
「須王!」
須王に呼応したのは、あたしではない。
須王は、後方から宙高く飛んで来るものを回転させるようにして手にし、そのまま宙から片手でそれを……黒い銃の引き金を、引く。
バアアアン!
そして、女帝に向けられていた銃が弾け飛んだのだった。

