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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

 え?
 え?

 同時に別の場所から銃音が響いて、ブロックが砕け散る。
 
 振り返れば、銀色の銃を構えた棗くんで。

 須王は棗くんが来ることを知っていたの?
 それとも須王が呼んだから、棗くんは現れたの?
 棗くん、裕貴くんの家では銃をひとつしか持っていなかったのでは?
 
 呆然とするしか出来ないあたしの横を駆けた棗くんは、そのまま朝霞さんの背を地面に引き倒すようにして、火から遠ざけたのだった。

「上原さん、バケツ!」

 棗くんに言われている意味がわからないあたしが、指をさされた方向を見ると、水が入ったバケツがあり、慌ててそれを両手で運んで朝霞さんに水を被せた。

 なぜこんなところに、そんなものがあったのだろう。
 確か、入って来た時は見当たらなかった。

 ということは棗くんが持参したの?
 え、棗くん、この状況がわかっていたの?

 その間にも、須王は小林さんもどきを取り押さえていた。
 
「こっちはOK」

「こっちもよ」

 ……それはあたしが叫んでから、3分も満たない僅かな間になされたものだった。
  

「このまま病院に運ぶわ。無理に引き剥がすと皮膚が剥がれるから」

 称賛の言葉もリアルな棗くんの言葉で飛んで行き、またもやタイミングよく聞こえてくる救急車の音に、あたしは驚くばかりだった。

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