この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

ああ……、あたしは。
皆の前で公開ちゅーをして、彼に抱き付いてとろんとしまっていたのだと悟り、行き場のない羞恥と屈辱さに、須王を涙目でキッと睨む。
「俺のせいか? ん?」
「……っ」
「いつもこんな程度じゃねぇだろ? 皆にこんな生温いのをしていると勘違いされても困るな。だったら見せてやるか。柚……」
「いりません、しません。いやー!!!!」
顎を掴まれたあたしは、やはり涙目で。
そしてなぜか、大爆笑されたのだった。
そんな時靴音がして、いつの間にかいなくなっていた棗くんが戻ってきた。
「――朝霞、下半身の火傷で重篤だって。皮膚移植はしているけれど、追いついていないようよ」
冷ややかにも思える声に、場が静まった。
「このままなら熱傷創に細菌が繁殖して敗血症となる。もって2日。仮に意識が戻ったところで、地獄よ。だから……このまま眠らせた方がいいか、決めて欲しいって」
「眠らせてって……」
「ええ、安らかに死ねるように」
あたしから出た言葉は、早かった。
「いやよ。朝霞さんにはもっと聞かなきゃいけないの。生きていて欲しいの」
「上原サン。こういっちゃなんだけれど、生きることで恥を晒すことになるかもしれないわ、彼」
あたしはまっすぐに棗くんを見つめて言う。
「それでも。朝霞さんの生死を、あたし達に決める権利はない。それをしてしまったら、あたし達と朝霞さんをあんな目に遭わせた奴らと、なんら違いがないわ」
そう言いながらも、須王の服を掴むあたしの手は震えていた。
だからきっとそれを隠すために、須王がその手を握ってくれたんだろう。
「……棗。人工皮膚は?」
「時間がかかりすぎるし、範囲が広すぎる」
須王の言葉を、棗くんが却下した。
「だけど、人工皮膚が届くまでの間、繋ぎとして速効があるものがあるとすれば、可能性はひとつ……。遥の異常性に賭けること」

