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エリュシオンでささやいて
第14章 brighting Voice

 以前、棗くんがこう言っていた。

――衛生的な環境で血が吹き出すようなことをされて、それでも遥は普通でいられる。……ううん、傷がどこだかわからないけれど、その傷を治癒出来るのかもしれない。

――遥の身体は拒絶反応を起こさず、提供者の身体も拒絶反応が出ないということ? そういう特殊性があるのかしら

 だけど、それは――。

「待てよ、棗姉さん。遥が〝再生〟出来る体というのは、推測だろう?」

 裕貴くんの言う通り、それは推測。
 それはただの可能性。

 ……妄想にも似た。

「遥のところに行くか」

 須王がそう言った。

 彼は、棗くんを否定していない。
 むしろ、棗くんと同じ結論に至った彼だから、その選択肢を信じているような気もする。

「だけど須王。遥くんは、病室から出れないのよ。AOPを使ってまであの特別室にいる!」

「そうだ、柚の言う通りだよ」

「だったら、入れた奴なら出せるだろう?」

 須王がなにを言っているのか、あたしの頭では理解が出来なかった。

「まさか、須王」

 しかし棗くんは理解出来たらしい。

「ちょっとこっち来て」

 棗くんが怖い顔をして、須王を影に連れて行く。

 棗くんに来るなと言われたけど気になってしまい、あたしと裕貴くんがこっそりふたりのやりとりを覗いた。
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